うつ病と不眠症は、密接な関係があることがこれまでの研究によってわかっています。
また、うつ病は「ココロの病気」と言われているように、目に見える病気ではないため周囲からもなかなか理解を得づらい病気の一つでもあります。
それでは、不眠症と密接な関係を持つ「ココロの病気」にはどのようなものがあるのでしょうか?
「ストレスが原因で引き起こされる不眠症の3つのタイプとは?」に引き続き、今回は不眠症との関連が強いココロの病気の3つのタイプについてお話ししていきますね^^
タイプ4:気分障害・感情障害による不眠症
この項目の中でお話しする「気分障害」や「感情障害」というのは、うつ病や躁うつ(そううつ)病のことを指します。
うつ病の重症度と不眠症の重症度の相関性は高く、うつ病を発症している人のほとんどが不眠に悩まされていると言われています。
そのため、不眠を訴えてお医者さんに診てもらったら、実はうつ病の初期症状だったということがよくあるようです。
また、不眠で悩み続けている人の多くが、うつ病を引き起こしやすいことも明らかになっています。
なお、うつ病になる人の8割が不眠症で悩んでいると言われていますが、うつ病と不眠症と「どちらが先か?」といった場合、不眠症が先行することが多いと言われています。
ちなみに、これまではうつ病に伴う不眠症の特徴は、早期覚醒であると言われてきましたが、実際には、入眠障害や中途覚醒が起こっていることも確認されています。
そのため、急性期のうつ病で見られる症状は、約90%の人が入眠障害や早期覚醒などの睡眠障害を持ち、不眠を訴えてお医者さんに診てもらった人の約2割がうつ病などの気分障害と診断されます。
また、うつ病の人は夜満足に眠ることができないだけではなく、日中も満足に眠ることができません。
例えば、健康な人では30~40%の人が日中に仮眠をとることができると言われていますが、うつ病の人は11~20%の人しか仮眠ができないそうです。
つまり、うつ病の人は、覚醒状態が常に高い状態にあるため、昼夜を問わず睡眠をとることが難しい状態になっているのですね。
ただ、うつ病になる人の中には、不眠症だけではなく過眠症になる人もいます。
なお、治療によってうつ病やその他の症状が良くなったとしても、60~70%の人に不眠症状が残ることが多く、うつ病の人にとって睡眠障害は重要な症状の一つとされています。
タイプ5:不安障害による不眠症
慢性的に不安を感じて、その不安から逃げようとする行動の特徴を持つ精神疾患のことを「不安障害」と言います。
ちなみに不安障害には、パニック障害、社会恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、全般性不安障害などが含まれます。
この項目では上記の中から主に「パニック障害による不眠症」についてお話ししたいと思います。
パニック障害の人は、自分から不眠を訴える人は多くはないようですが、実際には70~80%の人が睡眠障害を持っていると考えられており、早朝覚醒や覚醒障害などが多く見られます。
また、ある研究によると、普段の生活の中で不眠を繰り返し経験する人は、健康な人が35%に対し、パニック障害の人では67%と、約2倍の数値という結果だったようです。
なお、この研究によるとパニック障害に見られる睡眠障害は、早朝覚醒と熟眠障害が特に多く見られ、入眠障害に関しては、健康な人とほとんど変わらなかったことが明らかになっています。
それでは、パニック障害になるとなぜ睡眠障害が起こるのでしょう??
その理由を探るためには、パニック障害が起こる原因から知る必要があります。
まず、パニック障害が起こる原因としては、脳内物質の「セロトニン」や「GABA」の機能に問題が発生しているためと考えられています。
この2つの物質を簡単に説明するなら、セロトニンは覚醒系、GABAは睡眠系を担当している脳内の神経物質です。
そして、パニック障害の人が強く感じている不安や恐怖は、覚醒状態を促進させてしまう作用があります。
つまり、強い不安や恐怖を感じることによって、セロトニンなどの覚醒系の物質の働きが活発になってしまったり、GABAなどの睡眠系の物質の活動が弱まってしまった結果、睡眠障害が起こってしまうのですね。
また、パニック障害は目覚めているときだけではなく、眠っているときにも発作を起こすことがあります。
この発作は、睡眠の前半に起こることが多く、ステージ1・2の浅いノンレム睡眠から、ステージ3・4の深いノンレム睡眠へ移るときによく見られます。
そして、その時に感じる不安感や動悸は、起きているときに感じるものと同様に息苦しくなることもあるようです。
そうなってしまうと、もう一度眠りに就くことが怖くなってしまうため、不眠がさらに悪化してしまいます。
このように睡眠中に起こる発作のことを「パニック発作(スリープ・パニック)」と呼びます。
なお、スリープ・パニックは、徹夜明けや睡眠不足の状態で眠りに就くと発作を起こすことが多いようです。
タイプ6:PTSDによる不眠症
過去に大きな事故や事件に巻き込まれたり、とても悲しい出来事や強いショックなどのストレスが心の傷(トラウマ)となって、精神的に障害が起こってしまう。
このような症状の病気を「心的外傷後ストレス障害(以下、「PTSD」)」と言います。
PTSDで主に見られるものとしては、自分の意志に関わらず、引き金になった出来事を頻繁(ひんぱん)に思い出したりする症状です。
いわゆる「フラッシュバック」ですね。
また、PTSDの人は、その出来事を思い出したくないため、トラウマに関連する場面や場所をできるだけ避けるようになります。
これにはTVや映画・音楽、ネットなどのメディアから発信される情報も含まれます。
なお、PTSDの人が訴える睡眠障害としては、入眠障害、中途覚醒、熟眠障害など様々です。
その中でも、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒がPTSDと特に深く関係しているものと考えられています。
例えば、アメリカで行われた研究では、戦争体験がキッカケで生じたPTSDによって、多くの人が20~30年近く経っても、中途覚醒を中心とした睡眠障害を訴えています。
また、入院治療プログラムに参加している元軍人を対象とした調査では、全体の91%の人が夜中に目を覚まし、44%の人が寝つきの悪さに悩まされているそうです。
悪夢を繰り返し見るのもPTSDに見られる特徴の一つ
PTSDの人に見られる症状として、悪夢を繰り返し見てしまうのも特徴の一つです。
例えば、健康な人の場合、悪夢を見るのは全体の20~24%だけでしかなく、見るとしても「年に1回見るか見ないか」と言われています。
つまり、ほとんどの人が悪夢を見ないということですね。
ですが、PTSDの人の場合は、全体の60%の人が「月に1回以上」の割合で悪夢を見ていると言われているため、かなりの人が悪夢に悩まされているということがわかります。
また、悪夢を見る頻度は、トラウマからの経過期間や、そのトラウマの強さによっても差があり、悪夢の内容にも大きく関わっていると考えられています。
まとめ
以上のとおり、今回は不眠症との関連が強いココロの病気についてお話ししました。
それでは、次回のページでは「睡眠衛生や薬・内科の病気が原因で引き起こされる不眠症」のタイプについてお話ししますね^^
最後までご購読いただきありがとうございました。