「ナルコレプシー」は過眠症の代表格でもあるため、一度は聞いたことがあるとは思います。
しかし、この病気がどのような病気であるのか詳しくわかる人は少ないのではないでしょうか。
それでは「ナルコレプシー」というのはどのような睡眠障害なのでしょう??
ナルコレプシーとは?
ナルコレプシーとは日中に耐えられないほどの眠気に襲われ、その時の状況がどんな場面であっても眠ってしまう病気です。
また、ナルコレプシーは代表的な過眠症の一つとしても知られているとおり、過眠症の中ではそのメカニズムが最もわかっている疾患であると言われています。
なお、ナルコレプシーを発症する人は10代に多く14~16歳でピークを示します。
日本全体での有病者数は1万人に16~18人の割合で、全国では約20万人の人たちがこの病気に悩まされていると考えられています。
このように、ナルコレプシーという病気は決して稀(まれ)な病気ではありません。
また、「麻雀放浪記」で有名な直木賞作家の阿佐田哲也(色川武大)さんも、このナルコレプシーに悩まされていたと言われています。
■阿佐田哲也(色川武大)
色川 武大(いろかわ たけひろ、1929年3月28日 – 1989年4月10日)は、日本の小説家、エッセイスト、雀士。筆名として色川 武大(いろかわ ぶだい)、阿佐田 哲也(あさだ てつや)、井上 志摩夫(いのうえ しまお)、雀風子を名乗った。阿佐田哲也名義では麻雀小説作家として知られる。
つい最近までは謎の睡眠障害だったナルコレプシー
ナルコレプシーはネット環境が普及した今となっては、だいぶ知られるようになりましたが、実は意外にも2000年前後までは、まったく原因不明の謎の睡眠障害でもありました。
ナルコレプシーが最初に報告されたのは1880年のことで、フランスの医師ジュリノーという人が、過剰な眠気を持つ患者の以下の症例を2つ報告しました。
- 日中に耐えがたい眠気に襲われ、どんな場面であっても関係なく眠ってしまうが、しばらくすると普通に目を覚ます。
- 大笑いをしたり、仕事で取引が上手くまとまったりしたときに、脚の力が抜けて崩れ落ちてしまう。
このような眠気と脱力発作を発症する疾患をジュリノーは「ナルコレプシー(Narcolepsy)」と名付けて記録を残しています。
なお、ナルコレプシーという言葉の語源は、ギリシャ語で「しびれ・昏迷」を意味するNarkeと、「発作」を意味するLepsisを合わせた合成語です。
また、上記の症状を「ナルコレプシー」の名前として記録したのはジュリノーが初めてとされています。
しかし、実は17世紀にもイギリスの医師であるウィリスという人が同様の症状を記録しているため、ナルコレプシー自体はもっと昔からあったと考えられています。
ちなみに、ウィリスは「睡眠中の足元の不快感が不眠を引き起こす?「むずむず脚症候群」とは?」でもご紹介しましたが、「むずむず脚症候群」を初めて記録した人でもあります。
ナルコレプシーは本人ですら気付きにくい病気
ナルコレプシーに見られる特徴は「眠くて起きていることができない!過眠症に見られる4つの特徴」でもお伝えしたとおり、以下の4つの症状があります。
- 睡眠発作
夜、十分な時間を眠っているのに、日中、起きていられないほどの強烈な眠気に襲われてしまい、眠ってはいけない場面でも眠ってしまう症状。
- 情動脱力発作(カタプレキシー)
突然、全身の筋肉の力が抜けて脱力状態になってしまう症状。
- 入眠時幻覚、金縛り(睡眠麻痺)
眠りに入ったときに幻覚を見たり、金縛り状態に合う症状。
冒頭でもお話ししたとおり、ナルコレプシーを発症しやすい時期は10代に多く14~16歳頃にピークを示します。
ですが、この時期は受験勉強や夜遊びなどで夜更かしをすることが多くなるので、睡眠時間が減りがちになる頃でもありますよね。
そのため、日中に襲ってくる強烈な眠気と闘いながら授業を受けていることがある(あった)とは思います。
しかし、本人は「寝不足だからな……」と思っていたり、寝不足ではなくても「授業中は眠くなるもの」と思い込んでいる人も多いのではないかと思います。
上記のことから、家族はもちろん、本人ですら実はナルコレプシーであることに気付かないことが多いと言われています。
しかもナルコレプシーを発症後、お医者さんにかかるまで(またはお医者さんにかかったとしても)、ナルコレプシーと診断がされるまでにかなりの時間がかかることがあるようです。
まとめ:ナルコレプシーは睡眠構築の異常
ナルコレプシーを発症してしまうと、当然、本人には大きな不利益になります。
単なる睡眠不足であれば、健康な人であっても集中力が低下して、一時的に能力を発揮することができなくなります。
ですが、ナルコレプシーの場合は常にそのような状態にあるため、勉強や仕事の能率が上がらず、本来の才能や実力が出しづらくなります。
また、普通の人が眠気を感じる状況では、ますます眠くなるので「アイツはダメなヤツ」、「なまけ者」などのレッテルを貼られたり……。
しかも、家族も含めて周りの人でこの病気のことを理解してくれる人が少ないので、それが悩みの“タネ”にもなってしまうのは、とても残念なことですよね。
ナルコレプシーを当サイトで初めて知る人に覚えておいてほしいのですが、ナルコレプシーになってしまうと、覚醒や睡眠という状態を上手に維持することができないのです。
例えば、健康な人であれば、一晩に7~8時間眠りに就いて、そのあとは十数時間起きたまま活動することができます。
しかし、ナルコレプシーの人の場合は、1回に長い時間起きていることができないので、短時間の断片的な覚醒と睡眠を繰り返します。
これは、覚醒と睡眠の移り変わり、つまり覚醒と睡眠のパターンに異常があることから発症するためです。
そのため、本人の意思とは裏腹に、寝たくもないのに眠りに落ちてしまいます。
それなのに、「寝てばかりでダメなヤツ」、「なまけ者」、「そんなの甘え」と決め付けてしまうのは、あまりにも乱暴であり、残酷な言葉であると思いませんか?
周りの友達や職場の仲間、家族の中にナルコレプシーを発症してしまった人がいると、たしかに色々な人に心配をかけたりしてしまうことがあるかもしれません。
何度か発症していくうちに、呆れて何も言わなくなってしまったり、中には心無いヒドイ言葉を発する人もいるかもしれません。
ですが、本人は自分の病気としっかり向き合いながら一生懸命に闘っているのです。
落ちたくて落ちているわけではないのです。
人は悪く言われ続けていると、条件付けによって健康的な人であっても心が歪んでしまうことがあります。
しかし、ナルコレプシーを抱えている人は、うつ病を伴っていることがあり、うつ病の人の心はとてもデリケートです。
そのため、人から言われたことをそのまま素直に受け止めやすく、ネガティブな発言をされると「どうせ、自分はダメなヤツ」なんだと、ますます良くない方向に進んでしまいます。
そうなってしまわないためにも、すぐに悪いレッテルを貼るのではなく、ナルコレプシーとは、そういう病気であることを理解した上で、上手に付き合いながら、支えてあげるといった大きな度量を準備してあげることも必要であると私は思います。
それでは、今回の記事は以上になりますが、次回のページでは「ナルコレプシーに見られる4つの症状」についてお話ししますね^^
最後までご購読いただきありがとうございました。