「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」と言えば、あなたも一度は聞いたことがあるとは思いますが、睡眠の話しとなると、必ずと言って良いほど出てくる重要なキーワードですよね。
この2つの睡眠パターンの違いでよく言われるのが、「ノンレム睡眠=深い睡眠」、「レム睡眠=浅い睡眠」として、認識されている方が結構多いのではないでしょうか。
私も睡眠について勉強をする前まではそう思っていた内の一人でしたが、睡眠について勉強してみると、このような分け方は「間違った分け方」だってことがわかってきます。
その理由としては、実はノンレム睡眠とレム睡眠は、同じ睡眠中の状態であっても生理学的には、脳や全身の状態から見て全くの別物であるからです。
それは極端に言えば、覚醒中(起きて活動している)と、睡眠中が全く異なる状態でいるのと同じくらいの違いがあります。
これは一体どういうことなのでしょう??
脳には3つの作動モードがある
私たちが持つ脳の作動モードは大きく分けると、「覚醒」、「ノンレム睡眠」、「レム睡眠」の3つの作動モードがあります。
冒頭でもお話ししたとおり、これらの状態は全く異なるもので、それぞれに役割があるのですが、これら3つの作動モードを一つ一つ簡単に説明していきますね。
「覚醒」とは?
「覚醒」とは、言うまでもなく起きて活動している状態ですね。
この状態でいるときは、脳が活発な状態にあり自分の意志で何かしらの目的を持って行動をしているモードです。
覚醒中は、通常であれば体温が高く五感が冴えて意識もハッキリしているので、見たいものを見て、食べたいものを食べて、行きたいところに行く。
このように、自分の好きなように自由に行動することができます。
PCで例えるなら、電源が入っていてネットにも繋がっている「オンライン状態」ですね。
「ノンレム睡眠」とは?
「ノンレム睡眠」とは、いわゆる「脳が休息している状態」の睡眠モードです。
人を含め私たち動物は入眠時、順序としてはまず「ノンレム睡眠」から入ります。
また、ノンレム睡眠中には、1~4までのステージがあり初めは浅い「第1ステージ」から時間が経つに連れて徐々に深くなっていきます。
そして、ノンレム睡眠に入ったあとは、段階を踏みながら最終的に一番深い「第4ステージ」に入ります。(この記事のTOP画像のような感じですね)
また、それぞれのステージのノンレム睡眠に入る過程の中で、深部体温は下記の図のように徐々に下がっていき、脳の活動状態(エネルギーの消費量)も1日の中では最低になります。
■深部体温とは?
脳や内臓などの体の奥の体温のこと。
睡眠中は、深部体温を下げるために熱を外に逃がすように働くので、表面の体温(皮膚の体温)は逆に高くなる。
ノンレム睡眠中は、全身の代謝が下がるに連れて血圧や心拍数も下がり、脳が機能を落としているため、視覚や聴覚などの感覚系の処理能力も低下します。
そのため、ノンレム睡眠時は一般的に「脳が休息している状態」であると考えられているのです。
ただ、脳からの命令が完全に途絶えたり、感覚系の処理能力が完全に落ちているわけではありません。
私たちは睡眠中、必要に応じて寝返りをしたり、大きな音がした場合や急に部屋が明るくなったりすると目が覚めます。
このようなことから、ノンレム睡眠をPCに例えるならば、文字通り「スリープ状態」ですね。
ちなみに、一般的には「夢を見ているのはレム睡眠中」だと言われていますが、実はステージ1・2の浅いノンレム睡眠中にもおぼろげで単純な夢を見ていることがわかっています。
ただ、脳がスリープ状態に入っているため、ノンレム睡眠中の夢は記憶が残りづらくなりますが、ステージ3・4へ移行後は夢を見ることはなくなります。
「レム睡眠」とは?
「レム睡眠」とは、先ほども少し触れましたが、いわゆる「夢を見ている状態」の睡眠モードのことです。(TOP画像の薄いピンクの部分ですね)
ちなみに、レム睡眠は通常、60~90分のノンレム睡眠のあとに最初のレム睡眠に入りますが、このレム睡眠に入るまでの時間を「レム潜時」と呼びます。
なお、先ほど「ノンレム睡眠中にも(単純な)夢を見ている」とお話ししましたが、レム睡眠中に見ている夢は、ノンレム睡眠中の夢とは対照的にハッキリとしていて鮮明です。
また、レム睡眠中に起こされた人は「夢を見ていた!」と言う人が多く、内容も複雑で映画やドラマのようなストーリー性のある内容です。
そのため、レム睡眠中は「夢を見ている状態」と言われているのですね。
「レム睡眠と夢の関係」について詳しくお話ししてしまうと、この記事が長編記事になってしまうため、今回の記事ではあえて触れませんが、レム睡眠時は実は覚醒時と同じくらい、またはそれよりも脳が活発であることがわかっています。
ちなみに、レム睡眠時の脳の活動度を例えるなら、実は数学の難しい問題を一生懸命頑張って解いているときよりも、脳が活動をしている特殊な状態にあることがわかっています。
そのため、上記のように複雑でストーリー性のある夢を見るのだと考えられているのです。
しかし、感覚系や運動系の機能、感覚系から脳に伝えられる情報や、脳から運動系に伝えられる情報などがカットされているため、脳は活動していても体は眠っています。
また、レム睡眠時は体温の調節機能が停止しているため、外界からの影響を受けやすい状態になっています。
これらのことからレム睡眠をPCに例えるならば、電源は入っているけれど、ネットには繋がっていない「作業集中モード」の「オフライン状態」ですね。
ちなみに、この「オフライン状態」でたまたま目が覚めてしまった場合に起こるのが、いわゆる「金縛り」で医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれています。
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のサイクル
健康な人であれば、下記の図のように脳は一晩で「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を60~90分間おきに4~5回規則正しく繰り返して目が覚めます。
入眠時の前半は深いノンレム睡眠(ステージ3・4)の割合が高いのですが、後半になってくると、浅いノンレム睡眠(ステージ1・2)とレム睡眠を繰り返しながら覚醒に向かいます。
そして、このノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返すサイクルのことを「睡眠サイクル」と呼び、一晩で取る睡眠の割合は約75%がノンレム睡眠、約25%がレム睡眠と言われています。
見た目からもハッキリとわかる睡眠モード
ノンレム睡眠とレム睡眠には見た目にも特徴があるのですが、猫や犬などのペットを飼っている方ならすぐに確認できるのではないでしょうか。
例えば、ペットが寝ているときに、よく観察してみると眠っているときの姿勢には2つのパターンがあります。
わかりやすく言えば、「伏せ」の状態でお行儀良く眠っている姿がノンレム睡眠、完全に体制を崩して「だら~ん」とした格好で眠っている姿がレム睡眠です。
ちなみに、レム睡眠中に目元をよく見てみると、瞼(まぶた)の裏で眼球が動いているのがわかると思います。
この眼球の動きを「急速眼球運動」と呼び、英語にすると「Rapid Eye Movement」と書くのですが、この頭文字を取って「REM-Sleep=レム睡眠」と名付けられたのが、その名前の由来です。
まとめ
以上のとおり、今回は3つの作動モードについて簡単にお伝えしましたが、わかりやすくするために、下記にそれぞれの作動モードの一覧表を作ってみました^^
3つの作動モードの違い | 覚醒 | ノンレム睡眠 | レム睡眠 |
意識レベル |
高い(目的を持った行動ができる) | 低い(弱い刺激で目を覚ます) | 低い(強い刺激で目を覚ます) |
深部体温 | 高い | 低い | 不安定(体温調節機能停止) |
筋肉などの運動系の活動 | 正常 | 少ない(寝返りは可能) | 完全に停止(金縛り状態) |
視覚や聴覚などの感覚系の活動 |
正常 | 低下(機能はしている) | 完全に停止 |
夢の内容 | – | おぼろげで単純 | 鮮明で複雑。ストーリー性がある。 |
寝ている姿 |
– | 行儀良い格好 | 「だら~ん」とした格好 |
PCで例えると? | オンライン | スリープ | オフライン |
それでは、今回は以上となりますが、次回のページでは「レム睡眠」について、もう少し掘り下げてお話ししていきますね^^
最後までご購読いただきありがとうございました。